捨てれコラム#1 – アナザースター歌謡 – コード進行からDJ選曲

  • 2025.02.13
  • DJ
捨てれコラム#1 – アナザースター歌謡 – コード進行からDJ選曲

For English readers: I’ve translated this article into English! You can read it here:
Another Star Kayō: The Hidden Connections Between JPOP and Classic Soul

「捨てられなかったレコード」というお題でジャンル横断的にレコード紹介してゆくブログを始めました。

家族の高齢化や構成員のこだわりなど諸事情により私が部屋を出なくてはならず、またそれに伴いレコードや書籍などを大量に処分する必要が出たため、泣く泣く整理したのが2023年の夏ごろのお話です。恨み節(笑)で終わらせないためにはどうしたら良いものかと頭を悩ませ・・・

(数カ月間だけ別のマンションで暮らす、荷物を大量に処分する、住居間で荷物を行ったり来たりさせる、などかなり大変だったんですよ・・・)

前回、

捨てられなかったレコード#4 – 八神純子 – みずいろの雨

八神純子さんの大名曲「みずいろの雨」を取り上げました。毎回、長文を読むのが苦痛な人にとってはすぐ閉じたくなるくらいのテキスト量なのですが、それでもカットしている部分があったり、他の曲への言及も長くなっちゃうから別の機会に・・・としたりしています。

そこで、「捨てれコラム」と称して本編で紹介しきれなかったことや、更に派生してゆくような話、また駄話含めてやってゆければと思います。

八神純子「みずいろの雨」も、大雑把に括れば

アナザースター歌謡

としてカテゴライズ出来るなと。勿論Stevie Wonderの「Another Star」が由来となっておりますが、

他に、

・サタデーインザパーク歌謡
・ホワット・ア・フール・ビリーヴス歌謡(後に捨てレコ本編でも取り上げます)
・Just the Two of Us歌謡

など、偶然か意図的か既存曲とコード進行やアレンジが似通っている邦楽を指して私はそのように言っています。令和になっても「Just the Two of Us」というべきか「What You Won’t Do for Love」というべきかこのコード進行の曲は量産され続けています。

さて、この「Another Star」が収録されているアルバム『キー・オブ・ライフ』 (Songs in the Key of Life)は語り尽くせぬほどの超超超超大名盤なのですが(私以上に相方のプレステージ加藤がうるさい、三日三晩、YouTubeなら1曲につき3回分語る)、それはまた別のお話。

「キーオブライフ」のリリースが1976年、

「みずいろの雨」リリースが1978年、良いですね。参照元がAnother Starと断定したいのではなく、もしかしたらスティービー同様にそのあたりのラテンフレイバーを持つジャムバンドの影響だったりするかもしれません。

同じく1978年、ユーミンこと松任谷由実さん、イントロのベースパターンから唸らせてくれる「埠頭を渡る風」をリリースしています。単純な恋愛のものとは思えない深い世界観の詞も流石、曲の展開もオリジナリティに溢れており、これもユーミンの作詞作曲と松任谷正隆さんの編曲が冴えわたる1曲です。

この曲はビーイング系の中でも私の大好きなDEENがなんとジャズにしてカバーをしています。ロケ地が「みなとみらい ド真ん中!」という感じで夜景が美しいので合わせてチェックしてみてください。

ちなみに爆風スランプでサンプラザ中野くんではなくパッパラー河合さんがリードボーカルをとっている1989年「KASHIWA マイ・ラブ」は「埠頭を渡る風」とユーミンへのオマージュとのことで、曲調はガラっと異なるものの、アレンジや歌詞がどことなくユーミンを思わせる仕上がりになっていて面白いです。2コーラス目の歌詞に「モンテローザ」と出てくるのが個人的にツボです。

1979年にリリースの、高橋拓也さん「哀しみのフェスタ」、こちらは知らなかったのですが、アナザースター歌謡では定番として語られる1曲のようです。シングルEPとアルバム「Feel so cool」に収録されており、CD化はされておらずアナログのみで少し調べたところそれなりの市場価格になっているようですね。

中原めいこさんの「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」が大好きなのですが、彼女の「ロートスの果実 -夢楽樹-」もアナザースター歌謡と言えそうです。スティービーのお株であるクロマチックハーモニカをイントロに取り入れてるところもニクいですね。

それよりも衝撃だったのが、中原めいこ「エモーション」は完全にFoxy「Hot Number」(レコード所有しています)まんまのところがあり凄いので興味がある方は聴き比べてみてください。カバーとかではないと思うのですが、かつては大胆な引用もあったりして面白いですね。

スティービーワンダーからの直接的な影響を感じ、これぞ ジ・アナザースター歌謡 と言えそうなのが1997年リリース

・広瀬香美 – promise

コーラスパートも含め、おお!となりますよね。それにしても、コーラスやサビのコード進行だけでなく、その他の部分の進行やアレンジなども30年近く前なのに全く古く感じさせず単なるアナザースターオマージュに終わっていないところが、広瀬香美さんの作編曲能力の凄さです。

またこの曲のサビ直前「ゲッダン」(get down)がフックとなりミーム化したり、かつてツイッターで広瀬香美さん自身のキャラクター性がウケて跳ねたりと、スター性も半端ないです。ご本人のYouTubeも面白いです。

同じ1997年、これまた誰もが知る凄い名曲がリリースされます。

・高橋洋子 – 魂のルフラン

え?この曲のどこがアナザースター歌謡なの?と思われるかもしれませんが、サビのベースラインに注目して聴いてみてください。私はベースラインに注目すると「ラーララーラーラ~」と口ずさんでしまうのです。

インテンポになってからのサビまで2分近くかかっているのも私にとっては最高です。最近のヒット曲は忙しないものが多く感じられ・・・多くの若者にとって長尺の曲は苦痛のようですが。

歌唱・歌詞も含めてこの曲はとんでもない名曲です。私の中でエヴァンゲリオンといえばこの曲と「残酷な天使のテーゼ」が強すぎるんです。

他にもアナザースター歌謡と呼びたくなるものは沢山ありそうですね。もしお気に入りの曲があったり、「これもアナザースター歌謡かも?」という曲がありましたらぜひ教えてください!

拡大解釈したり、最大公約数的というか、DJの発想というか、相性が良さそうな曲を振り返ったり探したりするだけでもとても楽しい時間です。

かつて、「Another Star」「promise」「魂のルフラン」そして

乃木坂46 – 制服のマネキン

の全てをマッシュアップしたものをDJでかけたりしましたが全くウケませんでした(笑)。

「Another Star」と「promise」は溶け合い過ぎて気付かれもしませんでしたし、かけるタイミングなども見誤っていただんだと思います。でも発想や楽しみ方は間違っていると思わないので、細かい調整などしてまたチャレンジしたいです。

そう、乃木坂46「制服のマネキン」そのものは流石にアナザースター歌謡とは言えませんが、ピッチをいじってアナザースター的コード進行に乗せるといい感じでマッチするんですよね。

他にもJPOP DJ選曲的に

南こうせつ – どうせ人生に迷うなら

早見優 – XANADU

ポルノグラフィティ – アゲハ蝶

はアナザースター歌謡と相性が良さそうです。「アゲハ蝶」あたりピッチは大幅に動かす必要が出てきますが。

KinKi Kids – 雨のMelody

もっと言ってしまえばJPOPイベントでも禁じ手レベルのキラーチューン

KinKi Kids – 硝子の少年

これも相性良さそうですね。このあたりまで来ると切ない刻みのアコギが入ってたら何でも良いのかよ笑、とツッコミたくなりますが、良いんです。

時代性に注目すると面白いのが、景気が悪くなると音楽やエンタメ産業が逆に盛り上がりを見せることがあると聞いたことがあります。バブル崩壊前後は私の大好きなビーイング系をはじめ確かにCDが何百万枚も売れることがまだあり、そこから数年経ち、2000年が近づいてくると曲調も落ち着いたセクションを含むものが増え、先程の「切ない刻み」ではないですがそんな感じの曲が増えてきたような気もします。

この辺りを考察するには知識や整理が足りてなさ過ぎてあくまで個人の感想レベルになることをご容赦ください。

「アナザースター歌謡」みたいに勝手に名前をつけて遊ぶのも、(DJならではの)楽しみ方のひとつ。時代が違っても、不思議と響き合う音はあるもので。

「いや、それならこの曲もそうじゃない?」とか「実はこっちが元ネタかもよ?」なんて、仕方ない、教えてやるか・・・という方は、ぜひコメントください。


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